ロミオ輪舞曲★はじめての日。





 川瀬が深く口付けをしたとき、航平は頭の中でわんわん救急車の音が鳴るような感じがした。
「ゃ………」
 思わず知らず、声が漏れる。
「イヤぁ?」
 川瀬が本当に嫌そうに語尾を延ばして言葉尻を捕らえてくる。
「あ………嫌じゃな、い……かも」
「かも?」
「あ」
 心臓がばくばくしてて、うまく頭が回らない。航平は川瀬を見上げた。すがるような感じ。
「何?」
 簡単に返されてしまう。
(うぅぅ……こいつホントは心臓操作できるんじゃないかなぁ)
 さっきはあんなに鼓動が早かったのに。どうしてそんなに落ち着いてられるんだろう。
 航平なんか、心臓も血管も制御不可能な暴れっぷりなのだ。
 好きって言われて、好きって返した。
 最後までするって言われて、頷いた。
 我慢できないって言われて、心の中で(俺も…)って、実はそう思った。
 「俺が欲しい?」って訊かれて、一、二もなくぶんぶん首を振っていた。
 そして今、航平はその手に川瀬のシャツのボタンを手にかけていた。
 その手がめちゃくちゃに震える。指一本まで、全部自分のものじゃないみたいにいうことをきかない。
 それでも、寒さにかじかんだみたいな指先でどうにか川瀬のシャツのボタンを一つ外す。
(うぁあああああああああああ!!!!!!!!!)
 そこだけ肌蹴て川瀬の肌が………しかも肩口あたりのやたらと骨ばった部分が見えてしまい、航平はこれでもかっていうぐらい動揺してしまう。
「降参?降参してもいいけど、そしたら伏犠見せてあげないけど、いい?
 頭上からはそんな無常な一言が突き刺さる。航平は必死になって、できるだけあんまり物事を考えないようにして川瀬のシャツのボタンを外すことだけに集中した。もう、なんか本当のところは伏犠とかどうでもイイっぽくなっていたのだが、こうなっては意地みたいなものだ。最後のボタンを外し終わって、どぉーだ!みたいに胸を張って川瀬に仰ぎ返る航平である。
 が、川瀬のニヤリと笑んだ唇の形を見つけたとき、航平のそんな根拠の希薄な威張り姿勢はしゅうしゅうと空気が漏れた風船みたいにしおれていった。
(やぁあああああ、ばぁあああああ、いぃいいいいい!)
 そういう予感は得てしてよくあたる。人生なんてそんなものだ。
「俺が脱ぎ終わったんだから、次はお前の番だよな」
 なんて、嬉々として川瀬は航平に手をかける。ちょっと抵抗しようとした航平の手を押しのけて、あっさりとセーターのすそを取られた。しかもそんなことをしているせいで川瀬の前が全部はだけたシャツからイロイロさまざま見えてしまって、航平が泡食っている間にさくさくとセーターを捲くられた。
「万歳して」
 もう、なにがなんだか状態で、川瀬に言われるままに航平は両手を上げて、そうしたらうまい具合に川瀬がセーターを脱がしてしまった。
「かわせぇえええええ〜〜〜〜〜〜〜!」
 めちゃくちゃに情けない声が出てくる。自分からちゃんとわかっててやったのに、いざとなると現状に頭がついて行けてない。心臓が嵐に見舞わられてる。
 川瀬の肌が、めちゃくちゃに近くて、どうにかなっちゃいそうだった。
 押しのけて逃げてしまえば、とりあえず今だけなら心臓は安寧。でも、航平は川瀬が好きで、きっと川瀬が思うのとと同じ位に川瀬が欲しいって事をようやく知ってしまったから、「今だけ」のために逃げることはできなかった。
 
シャツのボタンが一つずつ外されてゆくかすかな音に、何かが一つずつ足されてゆくような気がしていた。
(頭ん中、たぶん、俺の頭ん中で………)
 航平はじジグソーパズルを思い出していた。今まで全然足りなかったピース。だから、パズルは絶対完成するはずがない。でも、今日だけで、びっくりするぐらい足りないものが足されていって、気がついたら後少しでパズルも完成しそうで………う、嬉しいような………絶対絶対ヤなような………。
(でっ、でもでも、ちゃんとしないと……なんだよな!? これってふつーなんだよな!)
 すっかりだまくらかされている航平であった。
 シャツを完全に脱がされて、ぴたっと密着するように抱きすくめられたとき、どきどきのあまり航平は息の根がとまりそうになった。
「ぁ……あ……ちょ………っと」
 その密着の範囲を少しでも減らそうと、心持ち体をずらそうとする航平。しかし背中から腕を回されてがっしり川瀬に抱きすくめられていて、身動きすら取れない。頭の右半分が川瀬の胸元に密着してて、頭がおかしくなりそうだ。
 けれど、その密着したところから聞こえてくる……伝わってくるどくんどくんっていう波動―――それが感じられたとき、航平はなんだか安心してしまった。
 これはきっと信じていいもんなんだよな。な、川瀬。
 航平は身じろぎしていた体から力を抜いた。抱きしめる川瀬の腕と、その胸に体重を委ねる。
 ゆっくりと川瀬が体を離したときも、その動きに任せていた。
「航平………」
 航平の変化に気づいた川瀬は、片手を航平の頭に載せて、一回、ぐしゃぐしゃぐしゃぐしゃーっと頭を撫でくり回した。いい子いい子されてる気分で、航平はそれを振り払おうとしたが、その航平の動きを利用していいように抱き上げられてしまった。わきの下に手を入れられ、もう片方は腰に回された………いわゆるお姫様抱っこ。
「わっ、っと! かかかか川瀬!」
「ごちゃごちゃとうるさいなー。こんなん今更だろー」
 川瀬はニヤニヤ笑いながら、ぎゃあぎゃあ言う航平にちゅっと音を立ててキスをしたりする。
「…ってか、このぐらいでうだうだ言われると、後がイロイロ困るんだけど」
 独り言のように呟いて、川瀬は航平を自分のベッドにバウンドをつけて落とした。「さてさて」、とそのまま航平の上に覆い被さる。航平だけ上半身裸にされているが、川瀬はシャツを羽織っていてそれがなんか微妙に不公平なんだけど………
(やだぁあああ!!! なんかそれ言ったらもっと大変なことになりそー!!!!!!!)
 だったらお互いに全部脱ごうとかそんな感じで絶対に説得させられるのだ。川瀬なんか口が達者だから、絶対絶対言い負かされてしまうのだ。
 ちょっとは川瀬の性格について体得してきてはいるようだが、所詮航平はアマちゃんである。まさか、今のこの状況自体がどちらかというとだまされて乗せられて「普通」だと思わされていることなんかには思いも及ばないのだ。しかも最後までするってことはすなわち最後まで脱がなきゃできないということもやはり忘却の彼方。………川瀬の今までの苦労がしのばれるところである。
 そして事態はさらなる航平の叫び声を生む。
「あ、あ、あっ!」
 覆い被さった川瀬が、さも当然のように航平の胸を舐め上げたのだ。しかもそれにとどまらず、舌は航平の滑らかな肌を伝い、微かな腹筋を刺激しつつ臍の穴にたどり着いて………
「か、かかっ、かぁわぁせぇえええええっつつ!」
 心臓が鼓動するっていうよりも、血流を吐いて吐いて吐きまくったぐらいにどっくんってなった。振動が頭まで響くぐらいにで―――航平は、慌てて川瀬の頭をがんがんたたいた。リミッター解除で爆裂に川瀬を弾き飛ばす頃よりはある意味進化している対応である、が、川瀬が究極に不機嫌になるのは仕方あるまい。
「……なに?お前俺に喧嘩売ってんの?」
 実はそうなの?あ? と凄まれても、航平にとっては反射行動なのだ。ドラえもんがねずみ出現に飛び跳ねて逃げるのと同じ心理状況なのだ。
 しかし、今日という今日は航平も根性が座っていた!
 ごくり、とつばを飲み込むと、不機嫌の頂点で眉根を撥ね上げている川瀬に正面から向き直る。
(おおおおおお俺だって、俺だって!)
 俺だって男なんだ、ぞぉおおおおおお!!!!!!!!
 頭の中で高らかと吼えた。ぐいっと目ん玉に力をこめて航平は川瀬に宣言した。

「お、俺が川瀬を気持ちよくする!!」

 びしっと根性入れたセリフである。が、応じた川瀬は相応の言葉を持っていなかった。
「はあ?」
 と、あまりに間の抜けた返事。間が抜けているというよりも、間も意味もくそも取りようもない航平の宣言にあきれ返った口調といってもよい。一瞬やる気が失せたか、取り外しにかかっていたベルトを緩める手もお座なりになってしまう。
 そこへさらに航平の第二弾の宣言が布告される。
「川瀬いいからお前が寝転がれよ! そしたら、俺ががんばって……スルから!!!!」
 何をしてくれるというのだろう?
 ……というか、航平が何をできるというのだろう??
 そこのあたりにいたく興味をもった様子の川瀬であるが、「そこにっ!」と指差す航平の手を捕らえて、その指先を口に含んで丹念に舐めてみた。案の定というか、それだけでまたボンっと一回脳みそを爆発させてしまう航平である。
「…ぁ……あ、って、川瀬! バカ!舐めんなよぉ!」
 いつものごとく、一生懸命逃げようとする航平。川瀬はくすりと笑いを漏らした。
「意気込みはいいんだけどねー。まぁ、航平には無理だな。まず無理。レベルが足りてない。武者修業してない宮本武蔵みたいな感じ……って、日本史か」
 川瀬は発作みたいにくすくすと肩を揺らした。よほど愉快だったようだ。
 それにむ〜っと膨れるのは航平である。
(あー、ちくしょーやっぱコイツ俺を馬鹿にしてる!)
 一睨みして面子を保とうとした航平に、川瀬の十分スパイスの効いた流し目が入る。
「そ〜ゆ〜のはねぇ、航平ちゃん、こうゆうことができるようになってから言えってヤツ」
 その言葉が終わるのと、航平が激しく体を震わすのはほとんど同時だった。
 いつの間にやら………きっかりとやる気を取り戻して、川瀬は航平のズボンのベルトを外して、ファスナーも下ろして臨戦体制に入っていたのだ。そして言い終わるや否や、航平のまだおとなしいそれをあっさりと取り出してぱくりと口に含んだのである。
「………あっん……う!!!」
 抗議の声すら出せずに、航平は突然去来したメテオライト級の快感に背中を大きくしならせた。
 濡れた感触が今までまったく知りようもなった快楽をつきつけてくる。もともと淡白なほうの性質であった航平である。めまいがするほどにそれは強烈だった。びくびく背がしなるごとに、川瀬の口の中で航平のモノは成長する。ぷるんと舌で弾けるぐらいの弾力性が生じる。その先端の割れ目をなぞるように川瀬に舌を這わされて、航平は腰を捩じらせた。
「ゃあ、あっ…んんんっ!」
 逃げたいのか、快楽に身をくねらせているのか判断がつきづらいところである。川瀬は一旦航平のソレを口から出すと、指でいじり出した。慣れている動作なので、コツやらツボやらは弁えているらしく、川瀬はその先端を親指でぐいぐい押したり捏ねたりしながら、他の指は添えて前後に小刻みに揺らしてやる。そうしておいて、自分は航平の唇を再度奪って、口内に舌を伸ばして自由にする。
「あふっ……あ、ぁ」
 息がうまく続かない航平の呼吸をさらに困難にさせておいて、はざまで脳みそまで侵食しそうな問いを重ねるのだ。
「航平……自分、見失いそうだろ?」
 声音にある種の優越感みたいなのを含ませて。
「いいよ、そういうのも。そういう航平も」
 ………でもそれは、決して航平に向けられたものではなくて、あえて言うなら今までの自分に対してというか世間に対してというか、「俺が獲得したんだぞ!これは俺のもんだ!」みたいな傲慢さを湛えた感情で………そしてそれ以上に、その笑顔全体にかもし出されていたのは、航平には疑いようもなくて、体とかフラフラになりそうな脳みそとかに染み込んできて。
 航平は自ら川瀬の舌に自分のものを絡ませていた。拙くても、伝わるものがある。川瀬が驚いて航平の顔を見直したときに、口がようやく自由になったときに、航平は舌に乗せた思いを口に出していた。
「……川瀬、好き………」
 荒い息で、どうにか告げる。川瀬は「知ってる」とだけ答えた。
 返答は短かったけれど、それはその後の触れ合いで伝えるつもりだったからなのかもしれない。
 川瀬はもう一度軽くキスをすると顔を下へとスライドさせた。航平のまだ色の若若しいソレの先端にも口付けて、そしてまたゆっくりと口に飲み込み始めた。
「くぅ……っ、、はぁ!」
 航平は川瀬の与える刺激に数瞬も耐えられなかった。生温く伝わる舌の動きでぎりぎりまで張り詰める。
 ワケなんか、全然わかんない。
 ダイレクトに感触だけがあって、それが川瀬の口で、舌で………直接舐められたりしてて。
 キスだけで心臓ばくばくなのに、こんなに与えられたら、頭なんか真っ白になってしまう。
「あぁん……ぅ………かわ、せ……も、」
 航平の口から瀬戸際を告げる声がこぼれる。
 川瀬はそれが合図だったようにより舌を強く這わせた。裏の筋の部分を容赦なく舐め上げる。
「んんっ!」
 小さなうめきとともに吐き出されたのは航平の欲情の印で………川瀬はそれをうまく手のひらで受け止めた。さらさらした触感のそれを指先でさすり合わせると、川瀬は航平に見せ付けるようにその指を舐めた。
「やぁあああああ、かわせっ!な、なななな何してんだよ!」
「見てわかんないの?舐めてんの、航平のを」
 見たらそんなのわかるけど、我が目を疑ってしまうじゃないか!
「だだだだってそれ、俺んの………だぞぉおおおお!!!!」
「お前のじゃなきゃ触んのもやだよ。自分のでも舐めたかないね」
「お、………おおおおおっ!」
 もはや支離滅裂してきた航平である。口をパクパクさせて喚いている。
(うわぁあああああ!!!!!! 俺なんか絶対イケナイことしてる〜〜〜〜〜〜〜!!!!)
 倫理観が悲鳴を上げているようだ。しかし一回イってしまった体は相当だるくて、思いのまま動くこともできずに川瀬のその痴態を止めることもできなかった。
「……ふーん。こんな味してるんだな、航平って」
 耳を塞ぎたくなることを川瀬は言う。こんな味って………不味いってことなんだろうかとかそんな………フフフフ、フキンシンなことまで考えちゃうじゃないか!
(あああああああ、脳みそとけるぅ〜〜〜〜〜!!!!!)
 自分の発する熱で沸騰しそうな感じ。体中の血管がもうムリってぐらい大量の血をどくどく巡らせてて、もう、なんか、なんか、もう………
 川瀬が触れている箇所すべてがものすごく熱くて、そこがあんまり敏感になってて、いろんな情報を航平の脳に送りすぎてパンクしそう。っていうより、もうパンクしちゃった感じ。全身ピンク色。「もっと航平を味わいたい」とか囁く川瀬の声すら刺激になって、航平はとにかく首を振っていた。
「お、俺も………!」
 川瀬だけ味わうなんて絶対それは卑怯だし、航平だってちゃんと男の子だ。がんばって、川瀬にも気持ち良くなってもらいたい。今はまだこんなだけど、いつかいつか!なんていうことも思うのだ。今はまだ、自分の快楽を追うことすらいっぱいいっぱいだけれども………心臓はちきれそうだけれども………
(川瀬………を、味わってやるぅううううううう!!!!!!!)
 どうすれば味わえるかなんて航平の想像の範疇を超えているが―――というよりも、今川瀬がやったようなことをしてあげればいいだけなのだが、ちゃんと航平ができるようになるかは川瀬の指導次第かもしれない。………嬉々として教え込むのは必至だから、生徒が悪くても熱心な先生の努力はいずれ報われるだろう。そして何より、”川瀬を味わう”のは、なにも川瀬のモノを舐めるとか銜えるとか手でイロイロしてあげるとかだけでもないことを、まずは今、丹念に教えてやるコトだ。
 川瀬はベッドの端に置いておいた小さなビンを手に取った。ネットで仕入れた小道具。まあ、最初が肝心なのだ。めちゃくちゃに善くして、あれこれ文句を言わせない作戦なのだろう。
「航平、足開いて」
 川瀬は指図にならない程度にやさしく航平に促した。そうしておいて、航平が自分から足を開くはずないことなど………そんなバリバリに恥ずかしいことができるはずないので、自分で強引に足を進めて航平の腰を少しだけ浮かせ、両足を開かせる。
「…あっ!やぁ!かわせ!」
 口では抵抗するものの、体は川瀬のするがままに開いてしまう航平である。なんだかもう体がいうこと聞いてない。それでもあんまり怖くないのは、きっと視界に映るのが川瀬だから。緊張はいっぱいしてるし心臓ばくばくだけど、怖くはなかった。
 それでも、さすがに後ろの入り口に冷たい、物慣れない液体がたっぷりと練りこまれたときにはびくんと体が震えた。川瀬が「大丈夫」って囁いてくれなかったら、泣き出してたかもしれない。すごくやさしい手さばきだったから、不思議と痛くはなかった。とぷんっていう、感触とともに、川瀬の指先を体内で感じ取った。
「ぁ………ふ」
 周辺の襞部をひとつひとつ丁寧に舐められて、羞恥心とかいろいろヒットしたけれども、一番は川瀬の笑顔で。「俺も好き」って告白したときに偉そうに………でも、ちゃんと「良く言えた〜」って誉めてくれてる感じで笑ってくれた笑顔で。そんな風に笑いかけられて「俺が欲しい?」なんて訊かれたら、誰だって精一杯首を縦に振っちゃうんじゃないだろうか。航平だって、そのとき、その笑顔と声に欲情しちゃったんだから。
「川瀬………かわせが欲しい……っ!」
 何時の間にか足されていた二本の指で体内をかき乱す川瀬。航平はぎゅっとまぶたを閉じながらうわ言のように繰り返した。右手は必死になって川瀬のシャツの裾を握り締めて。左手はベッドのシーツに押し付けながら。火照った頬には汗が煌く。
 川瀬は自分も息を切らせながら、航平の頭を数度撫ぜた。
「そーゆーコト言ったら、俺、暴走しちゃうでしょ。もうちょっと待って。絶対痛くしたくないから。ね?」
 耳元で囁かれる。よくわかんないけれど、この腰あたりであたってる感触があるのはきっと川瀬のモノだ。すごい張り詰めてて硬くなっているモノ。川瀬だって耐えてる。航平は返答のようにあごを引いた。もう、口ではうまく喋ることなどできない。
 川瀬はさらに指を増やして、いろいろな方向に内壁をついた。たぶん中指でそこをつかれたとき、航平は体をはねさせた。
「あぁ…っ!!!」
 その反応に、川瀬は重点的にそこを擦りあげた。航平は何度も何度もあえいで、次第に自分の腰が浮いてくのがわかった。ゆるゆるになっていく自分と、つま先だけ力が入っていく体。川瀬が指を出し入れするたびに扇情的な音が響く。気持ち良くて、そこも脳みそも解けてしまって、航平はただひたすら息を荒くする。
「航平、いれるよ」
 言われたときも、航平はただがくがくと頷き返しただけだった。入り口に川瀬を感じて、熱い塊が触れてきて、それだけでそこに神経が集中してしまう。息を一生懸命吐き出して、川瀬に前を擦られて、ぎちぎちと苦しい感じはしたけれど、何とか川瀬をすべて飲み込んでしまえたとき、航平はがああああっと涙がいっぱいあふれてきた。
「ええええっ、何、マジ痛いの!?」
 途端慌てる川瀬。とっさに腰を引こうとしたら、航平が両手でシャツを引っ張った。
「やぁ……って! バカっ! 抜くなよおおおお!!!」
 もぉおおおおお!!!と航平は駄々を捏ねる子供みたいに顔を真っ赤にさせた。
(バカバカ。川瀬の大バカ!)
 痛いんじゃない。もお! 何でわかんないんだよ!こんなにすげ―コトなのに!頭も体もかち割れそうなのに!
 好きとか愛してるとか、言葉ではいくらでも言えるけど、こう言うのはうそとか全然つけないだろー!!!
 心臓なんか、もう、ちゃんと機能してるかもわからないけど、なんかもうそれだけすごいこと。
 川瀬が航平の中にいる。
 どくどく川瀬のが動いてるのも、全部それは航平の中が教えてくれる。
 すごいこと。
 航平ははあはあ息を切らせた。涙もあとからあとからあふれてくる。
 そんな航平の様子を息を詰めて見つめている、心配そうな川瀬に言ってやらないといけない。航平はぐいっと涙をぬぐった。涙はびっくりするぐらい大量で、一回じゃぬぐえないぐらいで、何度か目を瞬く。

「感じる、の!川瀬いるって!もお!バカ、川瀬なんかバカバカバカバカ!」
 
 口から出てくるのはそんな悪態ばっかりだったけど、何故だか航平の言いたいコトは川瀬にだけはうまく伝わってしまう仕組みになっていて――――
 川瀬はいつもの笑顔を取り戻した。にやり、と笑う。
「ああああ。もう、お前が悪いんだからな。相当、お前が悪いんだぞ」
 そう言って、「でも痛かったらちゃんと言えよ」なんて付け加えてみせて、そして川瀬は航平の右足を掲げあげた。航平の腰が完全に宙に浮くぐらい腰を進めてきて、そして。
「あ…うぅん……ふ!! ………ああっ」
 最初だけゆるゆると前後に揺らされて、その後すぐに嵐がきた。
 ハリケーン。
 航平はものの見事に一瞬で理性とかもう全部吹き飛ばされてしまって、考えることなんか一つもできなくなって、ひたすら川瀬だけを感じていた。川瀬の与える快感だけが全部だった。
 弾けて、体内でも弾ける感触がして、ちょっと休んでるうちに、また嵐は再来した。


     + + + + + + + + + + + + + +


「うわぁあああああ、すごい、めためたかっこいい!」
 ついさっきまで喘いだり、事後、やっぱり川瀬に「二回もやりやがってバカぁああああー!!!!」と力いっぱい文句を言ったその口で、航平は今度は感嘆のセリフを紡いでいた。
「川瀬すごい、めちゃくちゃかっこいい!うわぁあああ!伏犠強ぇええええ!!!!!
 ころころと感情が変わるあたり、ホントにお子様な航平である。
 約束どおり川瀬に伏犠を見せてもらい、それをプレーしている航平がほんのちょっと前までエッチしてたなんて……それもめちゃくちゃに感じてたなんて、いったい誰が想像がつくだろう。こんなゲームごときでわくわくと目を輝かしているガキんちょが!
 川瀬は持ってきたお茶のボトルをぐびぐび飲みながら「あーあー、すげーなぁ!」と生返事をしていた。
 が、その表情が一瞬にして意地悪く閃いたのを、幸か不幸か航平はゲーム画面を見ていたせいで見逃してしまった。
 発端は、航平が伏犠の上に女性隠しキャラで一番駿足とうわさのジョカまでキャラ選択画面に見つけて、それはもう川瀬に尊敬のまなざしを向けたことによる。ゲーマー航平的には、川瀬は尊敬すべき対象に思えたのだ。「すっげーなぁ!!! 川瀬ってうまいんだなぁ!コツ教えてよ!! ねえねえ!!」とお願いし始めた。
 実は裏技をバリバリ使った卑怯なやり方でクリアしまくり伏犠もジョカも出現させた川瀬であるので、やばいなと舌打ちを入れようとしたのだが、その顔がふと意地悪く変貌したのである。ニヤリと口端を吊り上げる。
「いいぜー。航平、今日は遅いから、明日、とことんまで教えてやるよ。とことんまでなぁ!」
 航平は喜んでめちゃくちゃ転げまわっていたけれども、はてさて、お子様には勘が働かなかったのだろうか?
 明日も、この川瀬の部屋に来ないといけないということなのだが、その意味がわかっているのだろうか?


 がんばれ、ロミオ。ジュリエットはまだまだ発展途上だ!


はあ。ようやく一作品書き終えた安堵感っす。(ほっ…しかし思ってたよりかなり長いなぁ!しつこい?)
書きやすい航平視点にチェンジです。
………前から薄々気づいていたんですが、江崎は受け視点好きなヤツらしいです。
文体軽いし。。シリアス一生書けそうにないかなぁ。。いつか挑戦したいけど。
ではでは。ホントにお待たせして申し訳ありませんでした(ぺこり)
(02 10.16)

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