【ROUND4】
秀弥は男らしく覚悟を決めた。
そこにたとえ、やくざが列をなして「坊ちゃんお帰りなさいやし!」とか腰を下げていても、「帰りにおひとつどうぞ」とか白い粉末一つ持ってこようが、「親分の仇ッ!」とばかりに鉄砲玉が斬り込んで来ても動じないように、精一杯虚勢を張って。
とはいっても、先ほどのショックは全然抜けきれていない秀弥である。
もし本当にそんな場面が眼前で展開されようものなら、腰が完全に抜けて立ちあがることは出来なくなるだろう―――それは………それだけは避けたいことだったが。
なにせ、「腰が抜ける」ようなことを先ほどまでさせられていたのだ。
生まれて初めて、できることなら一生そんな体験などしたくはなかったというのに、秀弥は排泄器官に成瀬の指を挿入されてしまったのだ。
(排泄………って出すとこなんだぞおおおおぉぉぉぉ!!)
がっくしと肩を落とす秀弥。気を抜いたら体が重くて倒れそうになる。ずぅんと、腰にバーベルを下げているような重みを感じる。そしてその感覚は、秀弥の頬を赤く染める効果しかないのだ。
(ああっ、もう!しっかりしろよ、俺!!)
間近では成瀬がこちらを窺うように見ている。これ以上固まったままなら、史上最悪の「お姫様だっこ」をして、やくざの前を通らなければならなくなってしまう。なぜなら先ほど、「辛いようなら、俺が抱いていこうか?」と表面上親切にも聞こえかねない―――しかし、その表情を見れば誰もが性悪な魂胆を見止めるであろう成瀬の台詞があったばかりである。死んでも、自分の足で歩いてやる!と秀弥は成瀬をにらみつけ、ベンツの重厚なドアを開いた。
「な………」
そのときドアの向こうに広がった光景は、覚悟を決めた秀弥の想像の彼方にあるものだった。
そこには束と連なったやくざも、あのがっちりとした門も、うっそうたる森も、人を寄せ付けぬ雰囲気漂わした館も―――秀弥が見てもビビらないようにと覚悟を決めていた一切のものがなかった。
代わりに目の前にあるのは、テレビでしか見たことのないような、秀弥などでは一生かかっても住むことも訪れることすらなさそうな―――いわゆる”億ション”と呼称される類の、やたらと高級そうなマンション―――正確にはそのマンションのエントランスだった。前面ガラス張りの当然自動ドア。その奥には侵入者をシャットアウトするためのセキュリティーシステムがばっちり完備されていた。いちいちそこで訪問宅にお伺いをたてないといけないシステムだ。サラリーマン所得の秀弥の家みたいに、「遊びに行くかんなー」「カギ開いてるから勝手に入ってこいよ〜」ではないのだ。
って………
「ここ、どこ?」
まさしく、心境は「ここはドコわたしはダレ」状態だ。あのやくざの館はどこへ行ったのだ?
問うた対象は、心底呆れたと言わんばかりの顔をした。
「お前、本当は頭が悪いのか? さっき言っただろう、俺の家だ、と」
「え………だって、おまえの家って………あの市羽沢町の屋敷は??」
「ああ」
成瀬は軽く首を振った。
「あれは本宅。こっちが俺の家」
いとも明確な答えを返す。その簡潔な答えに、秀弥はものすごく納得していた。さすがはやくざだ!という納得の仕方である。当然、やくざなら金持ってるし、そのムスコの成瀬がこういう豪勢なマンションで暮らしている―――しかも、「俺の家」というからには成瀬だけの家なんだろう―――のは、至極頷けるものだったのだ。
「すげーなぁ!」
1階からてっぺんまで、数えたら14階あった。すごく近代的で、造りの凝った建物だ。こんなところに自分の家があったら、間違いなく友達を呼びまくりだ。ちょっとでも親しくなったら家に招待したくなる―――そのぐらいカッコイイマンション。
「別に………俺が稼いで俺が買ったわけじゃない。すごいのは、これを買える俺の親の財力なだけだ」
成瀬は素っ気無く呟く。本当にどうでもいいと思っている態度。
秀弥は、しかしこれほどの高級マンションに近づいたこともないためちょっと興奮気味だった。なぜ、自分がここへ来たのか………そしてその間、車中で何をされたのかはすっかり思考の外にあった。だから、ふと微笑を浮かべた成瀬が告げた言葉に、いちにもなく賛同していたのだ。
曰く、「入り口でだべってばっかりじゃなくて中に入ろう。中は中で、けっこう金使ってる感じだ」
そんな、悪魔の囁きに………
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運転席に控えたままだった高原を「もう帰っていい」と早々に追い払った成瀬は、ウカれた秀弥の肩を掴むとさくさくと中へ導いた。
カードキーを突き刺してエレベーターの中に秀弥を押しこめる。14階のボタンを押して、秀弥に向き直った。タイミングが合ったのか、その時ばっちりと2人の視線は交差した。
高級マンションとウカれていた秀弥も、その成瀬の強い視線に、はたと現実を思い出していた。
(わ、わ、わ!)
しまった。何を考えていたんだろう。高級マンションぐらいで、ていそーの危機を忘れてどうする!?
パニクった秀弥の髪を、成瀬ががしがしと混ぜた。
なんだかそれだけで、耳まで火照ってくる秀弥である。腰のうねりのような重みも復活する。意識しないと、声まで漏れてしまいそうだった。
「な、成瀬………俺………」
今更ながら、狭いエレベーターが密室なんだと気づく。しかし、その密室は、これだけの高級マンションである―――きっと、どこかで誰かに監視されているのだ。
(俺がゆでダコみたいに真っ赤なのも、そいつに気づかれるかもしれない)
しかし成瀬はそれ以上の行為に踏み切るでもなく、最上階の14階につくまでずっと秀弥の髪をぐちゃぐちゃにかき混ぜるだけだった。
「………さて」
たった二つしか部屋のない14階の内、左奥の部屋を開いた成瀬の第一声である。
緊張しきった秀弥は、その声でびくんと体を揺らした。
(さてって、さてって、さてって! とうとうなのか! 俺、ホモになるのか!)
相当キている様子である。
背後でそんな様子で固まっている秀弥に成瀬が気づかぬはずがない。成瀬はくくっと肩をゆすって笑った。
「何を緊張しているかは知らないが………コーヒーは飲むのか?」
随分と余裕たっぷりの声音。秀弥を操るコツを掴んでいるらしい。
「い、いる………」
蚊の鳴くような声とは、秀弥の返事であろう。すがるように成瀬を見つめる。ごくりとつばを飲みこむその喉の上下が、なんとも形容しがたく色気を誘う。
秀弥にしたら、そんなつもりもなく―――ただ単に緊張しすぎてつばが溜まちゃっただけなのだが。
「やめた」
成瀬は俯きがちの秀弥を覗くように見つめた。
「秀弥も、わかってるんだろ?」
「えっ………」
「コーヒーなんていらないだろ?」
「………」
見つめられる。玄関口で。たたずむ2人。しばしの無言。秀弥の頬は、今触れられたら火傷するっていうぐらい熱く染まっていた。
(わかってるって………わかりたくなんか、ない、けど………)
成瀬と関わって、たったの三日目。
三日で俺はモノにされてしまうのか!? とは、秀弥の心の叫びである。
しかし心とは裏腹に、体は―――
(動かないんだよ。あれだ、俺は蛙で成瀬は蛇。睨まれたら、動けなくなるのは道理なんだ。だから、俺は動けないんであって………)
絡み付くような視線。服を纏っているのに、裸のような気になってくる。
体の隅々で、成瀬の残した感触がうずく。
(動けないんであって………)
ついさっき高められたところが反応してる。その後ろも………生まれて初めての行為を受けたそこも………。
「成瀬………」
わからない。熱があるのかもしれない。
その口調が、熱を帯びていたから。
すごく変なことを口走りそうだった。
だから、秀弥は口をふさいだ。動かない己が、唯一動ける方向へ。動ける行為に。
「んっ」
互いの歯列があたって軽く鳴るぐらいの勢いで、秀弥は成瀬に口付けていた。
(俺、も、思考回路ぶち切れてるのかも………)
成瀬は一瞬あ然として秀弥のキスをされるがままに受け入れていた。
が、この男がそうそう為すがままになっておくはずがない。細い秀弥の腰を左手で掬うと、右手で肩を押し下げた。いとも容易く、秀弥はその場に背から倒れこんでしまった。その感覚に秀弥は痛みを予感し首を竦めたが、成瀬の腕に支えられ―――玄関の足の長い敷布の上に音もなく寝転がされた。
それを確かめるすきもなく、秀弥が仕掛けたはずのキスは主導権を成瀬に移して、その分激しさを増していた。口内を蹂躙される。絡め取られる舌。唾液。混ざり合う。
昨日のとも、今日のともまた違うキス。
新鮮に秀弥を翻弄していく。そっちはヤバイって、かすかに残る理性が警鐘をがんがんに打ち鳴らしている方へ、秀弥をいざなう。
「あ………は、ぅん」
一瞬離された口元から、呼吸の代わりに漏れるのは快楽にゆれる声。
それは多分、スイッチだ。
自分の声で、恥ずかしげもなくイイ気分になってしまう。快感がオンになる。
成瀬が秀弥のシャツのボタンを外し、上半身をはだけさせるのを、むしろ手伝うように体を揺らす。半そでのシャツは簡単に肌を滑り落ちた。あらわになる胸。
そこに成瀬の顔が降りた。
探るように鎖骨や胸元周辺を舐められて、秀弥はあられもなく声を上げた。
「あぁ………なるせぇ………はぁ………」
じわじわと立ち上る快感。くせになりそうな感触だ。たまらない。
しかしそれは、ただの第1段階に過ぎなかった。成瀬はもったいぶったように周辺を舐めまわした後、いきなりその胸を飾りを強く押し舐めたのだ。
「ああっ!」
全身を駆け巡る刺激だった。敏感なそこはみるみるぷにゅっと膨らみを持つ。舌で転がされては、息すらまともに継げない。なのに成瀬は、もう片方の膨らみを指で抓りだしたのだ。
秀弥はひっと空気を飲みこんだ。結果的にそれは胸を反らしてしまい、さらに強い刺激が加わってしまう。
「感じるのか?」
胸の突起を舌で玩びながら成瀬が囁く。
「こっちも」
反対の突起を指の腹でこねくり回す。
熟れたように、秀弥の胸は赤く膨らんでいた。
返事が出来ない秀弥に、成瀬は濡れた唇で笑んだ。ぞっとするほどの色気。虜になる。いつのまにか下着ごとズボンが取り去られていたのにも、抵抗する気は失われていた。
目は、成瀬の秀麗な顔を追っていた。たまにその髪が汗をはじくのが、たまらなく綺麗だった。顔にかかる髪も、ものすごくぞくぞくさせる。
(俺………俺………おれ………)
成瀬が、躊躇いなく自分のモノを口に収めるのを、秀弥はいたたまれず視線を逸らした。あんなに綺麗な唇が、自分のあんなものを銜えてるなんて………
頭が真っ白になるのを懸命に抑える。イったら、次は?っていう強迫観念みたいなものがイくのをためらわすのだ。
「はあ………は、はっ」
短く息をして、懸命に意識を逸らした。
(なんで、こんなことに………)
考えても、ぶちきれた思考回路はまともに作動しない。しかも体からは、ひっきりなしに快楽が波のように後から後から秀弥を攻めたてる。
きつく吸われて、思考が焼き切れた。今日だけで、四回目の絶頂。いくら若いといっても、部活動もしていない秀弥には体力の限界だった。
「ああん………やぁ………」
口から秀弥の精液を吐き出した成瀬が、そのぬめりを利用して後ろに指を入れたときも、口だけの半端な抵抗しかなかった。
「大分………やわらかくなってるな。さっき解しておいた甲斐がある」
成瀬は最初から2本の指を突きいれて、秀弥を攻めあげる。
しかし秀弥の後ろは、成瀬の言うように車中での行為の甲斐あってやわらかく解きほぐれていて、成瀬の指をすんなりと飲みこんでいた。
根元まで突き入れた指で、成瀬は容赦なく秀弥の反応したポイントを擦りあげる。秀弥は敷布の長い毛を掴んでその快感に耐えた。
「あっ………うぅん……っ!」
それはあまりに激しい快感の連続で、善すぎて止めてほしい。
どうにかなりそうだった。
擦り上げるたびに、体がびくびく反応する。腰が、自然に持ちあがる。
「……な、るせ………も、どうにか……」
ついさっき達したばかりの自身が首をもたげるのも自覚していた。もうそんな元気はないはずなのに、強い刺激に箍が外れているのだ。
「や………なるせぇ、俺……おれ………」
熱に浮かされた目で成瀬を見上げる。限界を訴える。
成瀬はそんな秀弥に、口元だけの笑みをくれた。
「言えよ、正直に」
くいっと指を折り曲げながら言う。秀弥は涙目になってそれにあえいだ。
「しょ………じき?」
「俺、の続き。俺がどうしたんだ?」
愉悦に満ちた声。秀弥は犯されていて、絶対の力で秀弥を犯してるのは自分だと言っているようだ。何かして欲しいなら、恥も外聞も捨ててそう言えと迫っている。
(おれ………)
思考がまとまらない。まとまりそうになると、下からの突き上げがそれを妨ぐ。あえぎでいっぱいになる。
(どうにか、して、ほしい………)
それが全て。
この場合、このシチュエーションで、どうにかなるってことはそれはイコール………
まとまらない考えで、秀弥は思いついたままに口に出していた。
「いれて………なるせ、入れて」
途端、成瀬は秀弥から指を引き抜いた。
すばやい仕草で自身のそれをズボンの中から取り出す。秀弥のすんなりとしたモノに比べたら、長さも太さも二回りぐらい大きな一物。
「よく、言えた」
耳元で囁かれるのと、そのブツが秀弥を貫くのはほとんど同時だった。
「あああああっ!」
その突き上げに、秀弥は悲鳴を上げた。
みしみしという擬音語が脳内で鳴り響いていた。先の、一番太い所が秀弥をいたぶる。
「やっ……ちょ………成瀬、ムリ!! って、………ってえ!」
思考回路はぶち切れて揉みくちゃにされて一塊に練り合わされていた。
(イテエ、まじ痛いって!)
「抜け!抜いて!!」
しかし成瀬は、敷布に秀弥をしっかりと組み敷いていて、秀弥の足を大きく抱えあげた。抜く気なんて一切ない。
「ほんと狭いな。あれだけ解したのにな………最初だけ、耐えてろ」
自分も額に汗を浮かべて、涼しげにそう言う。
「一気に行くか?」
(一気って、マジかよ!? 成瀬、やめっ………)
「やああああああっ!!」
先の引っかかりがぐいっとめり込む。猛烈な痛みに、秀弥は気を失いかけた。しかし、後から後から続く痛みに、意識を手放すことすら出来なかった。だが、どうにか先端の全てが体内に収まった頃には、その猛烈な苦痛はなりをひそめる。そこさえ入れば、後はそれより細い部分だ。先端が進む地点は痛みを訴えるが、なにより一番苦しかった入り口の部分が楽になった。
「くっ………」
成瀬が詰めていた息を吐き出す。
「わかるか?」
くいっと動かして、その存在を示した。
秀弥は痛みによる紅潮とは別に、頬が染まるのを感じた。
(ヤって………ヤられてしまった!)
一応、男も女も通じて、初のエッチである。これをエッチと呼んでいいかわかりかねるが、とにもかくにも初体験であることは間違いない。
深いトコロまで、成瀬が居るのがわかった。そのカタチもなんとなくわかってしまう。質感も、伝わる。
心臓が、破裂しそうに高鳴った。成瀬は秀弥の体がその大きさに慣れるまで待っているのだろう。秀弥に覆い被さったまま、動こうとはしなかった。その顔が秀弥のすぐ上にある。顎を伝った成瀬の汗が、秀弥の頬ではぜた。
「はぁ…はあ……なる、せ」
荒い息で呟く。その声すら成瀬に奪われた。
両手で掲げた秀弥の足を、膝が床に付くぐらい折り曲げて成瀬は秀弥の口を塞いだ。下がおとなしくしている分、口は荒れ狂うように蹂躙される。舌が縺れ合うほどの深いキス。もう、どちらがどちらのものかなんて、区別はつかない。
秀弥は息苦しさも合わせて、きゅっと眉を引き絞った。ひどく官能的な仕草。
「動くよ」
口を解放した成瀬の台詞が、さらにその眉を官能的に顰めさせる。
「くぅ………ぁ……ぁあん!」
言葉とともに、成瀬は秀弥の体内で律動をはじめる。引く動きも、押す動きも、全て感じ取れるほどに秀弥は過敏になっていた。成瀬の大きさに慣れてきたそこは、痛みよりもなんともいいがたい感覚だけを秀弥に与える。体が持って行かれるような………奥に押し込まれるような………
それが、次の瞬間には著しい性感を秀弥に施した。
「ひっ………あああっ!!」
そこは、車内で開発された性感帯だった。指での鋭い刺激よりも、もっと質量ともに巨大なものが快楽を与える。
「感じる?」
執拗にそこを攻め上げながら、成瀬が問う。微量の焦燥感が含有された口調。低音の効いたその声は、秀弥の鼓膜を犯す。
「ここだろ?」
より、スピードと圧力を強めて言う。あまりに強い刺激に、秀弥は飲みこめきれない唾液が口端から流れ落ちた。がくがく腰を揺さぶられる。
「ぁ…う、ぅん………やぁ…」
感じ過ぎて、理性は完全にどこかへ放逐されていた。今は、ただこの快楽だけが、秀弥を支配するものだった。
秀弥の腹と成瀬のシャツの間に収まっていた自身が、すっかり立ち上がって薄透明の液をたらしていた。成瀬の動きとともにシャツで擦れて、びくびくと反応している。
「はあ……も、…成瀬ぇ………おれ………」
我慢は出来なかった。
「もぅ……ムリ、イク………」
その声と、秀弥自身がはじけるのと―――そして、秀弥の最奥に熱いモノが注がれるのは、たぶんコンマの違いもなかった。
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(俺は、初めてなのに、あんな、玄関でがっつくようにされてしまったのか?)
ぐしゃぐしゃと頭を掻き毟った所で過去を変えることは出来ない。
その後で場所を移して成瀬の寝室でえんえんと9時過ぎまでヤられたことも、記憶を抹消したくても、この体に、その名残のように鈍痛がある。喉がひりひりするのは、あえぎ過ぎたせい。
昨夜、11時過ぎにようやく帰宅して、そのままベッドにもぐった。
姉の莢佳の誰何も無視して、彼女でも出来たのかと下世話な勘繰りをはじめる妹の莉佳の嬌声も耳に入らず、毛布を頭まで被ってやり過ごした。
一睡も出来ず、今は午前10時。
秀弥は、小学中学と守りきった―――高校に入ってからも、しっかりと狙っていた皆勤を、その日とうとう、しかも”さぼり”で逃すことになったのだった。
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